医療と福祉の"シゴトバから"ダイレクトな情報をお届け

薬の包みの中に”やさしさ”をみつけた調剤薬局
アルテ薬局

アルテ薬局
薬の包みの中に”やさしさ”をみつけた調剤薬局
※本インタビューはシゴトバcolorのスタッフがお伺いして取材を行いました。写真撮影の際はマスクを外して頂きました。


「調剤薬局」と聞いて、どんなことが思い浮かびますか?

医療職やその周辺領域で働いている方は具体的に思い浮かぶかもしれませんが、そうでない方にとっては、病気になって病院にかかって処方箋をもらって、その時に薬をもらいに行くところというイメージだと思います。

けれども、実は薬局の役割はもっとたくさんあって、私たちの身近にある存在でした。そして、服薬をテーマにいろいろな場面で様々な業種との関りもある地域の拠点にもなり得ることを感じたインタビューでした。

今回紹介するのは、薬局にとどまらずに地域を飛び回っている方たちがいる調剤薬局についてです。
水戸駅南口にある開局4年目の薬局
アルテ薬局は、水戸市にある調剤薬局です。

水戸駅南口のロータリーを抜けて、マンションやオフィスビルの立ち並ぶ大通りを歩いていくと、10分程度でアルテ薬局に到着します。

オフィスビルの1階にある入り口を入ると、真新しく、白を基調にした清潔感があふれています。
開局してまだ4年目。目の前にある心療内科クリニックの開院に合わせて立ち上げた新しい薬局です。
アルテ薬局をはじめるまでのこと
今回は薬局長の鈴木さん(薬剤師)にお話を伺いました。
鈴木さんはアルテ薬局の薬局長であり、開設法人である株式会社ブレストの代表取締役でもあります。

ダルビッシュ風のイケメンで、失礼ですがとても社長には見えません。
サーフボードを抱えて大洗サンビーチを歩いていそうな雰囲気ですが、サーフィン経験はないそうです(笑)。

まずはアルテ薬局の名前の由来について伺いました。

「”アルテ”はイタリア語で”芸術”を意味する言葉です。芸術って後世になってから評価されるものが少なくありませんよね。薬剤師の仕事として、薬を中心とした不安感を軽減する事が大切だと私は思っています。そのためには既成概念にとらわれずに、ありとあらゆることをやっていきたいです。その取り組みがやや独創的なものであって、周囲から評価されないこともあるかもしれません。それを恐れずに果敢に挑み続けます。その挑戦を続けた先で、もしかしたら芸術作品と同じように、後になって評価されるかもしれません。そんな大胆な薬剤師が集まる場所となるようという想いを込めてアルテ薬局と名付けました。」

名前の由来を伺っただけで、今までの調剤薬局のイメージが覆される感覚とワクワク感があります。

続いてアルテ薬局をはじめたきっかけについて訊いてみました。

「前職でそういう仲間に恵まれていたというのがあると思いますけど、診療報酬の改定の度に、こうした方が良いのではないか、こういうことが政策的に望まれているのではないか等、職場内でディスカッションしていました。現場レベルでそんなことを話すのが好きな仲間がそろっていた職場でした。今思うとちょっと変わっていますよね。」

懐かしそうに当時を振り返る鈴木さんは、終始楽しそうな表情をしています。

「当時は、今は難しいなとか、少し様子を見ようとか、方向性は見えているのに何でやらないんだろうと思っていました。だったら自分でやっちゃおうという考えにいたりました。薬局を経営している先輩に相談したら、面白いよ、やってみなよと背中を押されて決断した感じですね。」

開業のタイミングを考えていたところ、4年前に前職の法人が水戸駅前に心療内科のサテライトクリニックを開業するということになり、その門前薬局としてアルテ薬局が生まれることになります。

「自分でやってみて、大変ですけどやっぱり楽しいですね。大変というのは経営者になるといろいろと考えることが増えます。やりたい事だけではなく、やらなきゃいけない事、やれる事といった基準でも考えます。そういう意味で日々判断の連続です。ただ、私はもともと安定を好まないタイプなので、そんな毎日がとても楽しいです。」

お話を重ねるうちに、アルテ開業の背景にある鈴木さんの熱い想いにも触れることが出来ました。

「薬局って要らないんじゃないの?とか薬剤師不要論なんてのも耳にすることがあるんです。社会保障費が増えていく中で効率化が必要というは分かります。今後は大手ECサイトを通して薬が買えるようになるとかという話もありますし、そういった報道を聞いていると薬局要らないだろうという声になってしまうのも理解できなくはありません。ただ、多くの方はそれで良くても、薬局の機能を必要としている方たちもいます。」

「地域包括ケアシステムを整備して、365日24時間、地域で、在宅で介護やケアをするというのが現在の流れです。それに伴い、自宅で慢性疾患の療養を行う方が増えていますし、老人ホームやグループホームといった非医療施設で医療的ケアを必要とする方々も増えています。こういった方々やご家族に、あるいはスタッフに、薬局が出来る支援を届けたい、必要としている人たちの傍らに居たい、そういう想いがアルテ薬局を始めた背景にはあります。コスパだけ考えると良いことばかりではありませんが、地域の調剤薬局の存在意義はそこにあると思っています。」
薬剤師を目指したきっかけとこれまでのキャリアについて
続いて、そもそもどうして薬剤師になろうと思ったのかについて伺いました。もともと、やろうと思ったら一直線にすごいエネルギーを発揮する、鈴木さんの人柄が感じられるエピソードです。

「実は姉も薬剤師です。一番上の姉が薬剤師で、その次の姉が栄養士でもともと家が医療系でした。当時の父親も資格はとっとけという考えでした。そういう下地はあったんでしょうね。」

「高校3年の夏に家族旅行に行きました。薬剤師の姉が薬学部の4年生の時です。みんなで姉が1人暮らしをしている仙台のアパートに遊びに行きました。医学や薬学の教科書やら参考書がたくさんあって、何気なくそれをパラパラ見ていました。その時はじめて姉とゆっくり話をして、薬剤師がどういう仕事なのかということを知りました。何か面白そうだなと感じました。あと正直な話し、姉のアパートに泊まって一人暮らししたいなと思ったのもあります(笑)。」

「そこからが大変でした。高校3年の夏までは専門学校にでも行こうかなと思っていたので、完全に受験勉強で出遅れています。薬剤師になるために、今の自分の状況と、得意不得意などを含めて受験戦略を考えて進学候補先を決めました。そこからは必死に勉強しました。自分で言うのも変ですが、よくそこから受かったなと思います。必死にエネルギーを注ぎ込んでいました。」

薬剤師になってからのキャリアも伺いました。

「最初に調剤薬局を1年半くらい経験しました。薬剤師としての関りの幅を広げたいというのと、大きな組織を経験したというのもあり、総合病院の病院薬剤師に転職しました。そこで5年くらい勤務しました。なぜかそこの病院の偉い人に勧められて、前職の精神科病院に転職して、そこが長くて13年くらいの勤務ですね。その後に独立してアルテ薬局を始めました。」

鈴木さんは茨城県で唯一の精神科専門薬剤師の資格をお持ちです。その取得エピソードも鈴木さんらしさが感じられてユニークです。

「薬剤師獲得に役立つかなと思って。精神科って薬剤師にはあまり人気は無いんですね。人材獲得にはいつも苦労していました。ガンの専門薬剤師というのもあって、その資格を取るには、3か月現場実習が必要なんですね。その実習の時に職場の魅力を伝えてリクルートをしているというの訊いていました。精神科専門薬剤師制度が出来た時に、将来的に現場実習が入って同様のリクルートが出来るのではないかと閃いたんですね。それで頑張って取ってみました。ただ、実習制度までは出来なかったので目論見は外れましたが・・・。」
アルテ薬局での仕事について
アルテ薬局での仕事について伺いました。大きく分けて、近隣の心療内科クリニックからいらっしゃる患者さんへの調剤と在宅療養患者さんへのケアの2つがあるそうです。

「目の前の心療内科クリニックさんからいらっしゃる患者さんが一番多いです。その患者さんたちから処方箋を受け取って調剤を行っています。心療内科の患者さんの場合はある程度の期間通院が継続されます。2週間とか4週間ペースでいらっしゃるので大体顔見知りになります。ですので、いつもと様子が違うなとかちょっとした変化にも気が付けたりします。薬が変わった時とか、増減した時には丁寧に説明をしたりもしています。」

「在宅療養に関しては、在宅訪問をして薬を届けたり、実際にベッドサイドでお話を伺ったりします。施設入所の方と、自宅療養の方とで関わり方が変わります。施設入所の方の場合は、基本的に施設に看護師や医療職がいますので、看護力や介護力があります。調剤をして薬を届けて、療養の様子をうかがってと、どちらかというと病棟薬剤師の様な動き方です。」

「自宅療養の場合はよりその人に向けて調剤する様にしています。自宅での療養ですので、常に専門職がいるわけではありません。訪問看護や訪問介護が定期的に入ってサポートしていますのでその方々との連携を意識した関りになります。」

自宅療養の方への関りについて詳しくきくと、その細やかなこころ配りに驚かされます。

「自宅療養の方は複数の薬を飲んでいる方がほとんどです。そうすると1回に飲む錠剤が3つとか5つとかになります。飲み忘れや飲み間違いを防ぐために、1回に服用する薬をまとめて1つの袋に入れて処方してあげます。これを一包化と言います。」

「訪問看護の方と連携していると、この患者さんは血圧の薬を飲んでいるけれども、血圧が下がったら血圧の薬をすぐに中断する様に指示されていることが分かったりします。一包化していると今度はそれがあだになって、血圧の薬が中断になると飲む時に血圧の薬だけを取り除いて飲まなければいけなくなります。そこで、そういった可能性がある患者さんの場合は、血圧の薬とその他の薬を別々の袋に分けて調剤し、ホッチキス止めをして渡しています。こうすれば血圧の薬が中断になった時にすぐに取り外しができて、飲み間違いを防ぐことが出来ます。」

在宅をやっている調剤薬局は少ない。コスパも悪い。でも地域の最後の受け皿になりたい。
鈴木さんのお話を伺って薬剤師さんってこんなところまで考えてくれているんだと驚かされました。
そして、鈴木さんが調剤したお薬を飲まれている患者さんやご家族の笑顔が想像できました。
どんな人が働いていますか?
最後にアルテ薬局で働いている方について伺いました。

「私を入れて薬剤師が2名、医療事務が2名です。年明けから薬剤師が1人入社する予定ですので、もうすぐ5名体制になります。30代から60代まで様々な年代の方に働いていただいています。」

楽しく無理なく働くことを強調する鈴木さん。そこにもアルテ薬局が患者さんに向けて大切にしている想いを感じました。

「アルテ薬局に通ってくる患者さんは、ある程度継続して通院している方です。大体顔見知りになります。そうするとちょっとした変化やおや?今日は何だか様子が違うような気がする・・・って時も分かるようになるんですね。そんな時に、薬の話でなくても良いし、雑談でも良いからコミュニケーションをとるようにしています。訪れることで患者さんの不安が軽くなる薬局を目指していますし、スタッフともその考えを共有しています。」

「でもそのためにはスタッフが元気でないといけません。楽しくないといけません。元気って元気な人から分けてもらうものだと思うんですよね。小規模な薬局ですので、制度や仕組みよりも1人ひとりのパワーに頼らざるを得ません。だから楽しく無理なくをスタッフにいつも伝えていますし、私も気遣う様にしています。」

右の写真は患者さんから頂いたポスターとのことでした。
患者さんとの距離が近い、鈴木さんの人柄が見て取れました。


※インタビューは2022年10月に収録されました。
スタッフ構成など、ご応募時点とは異なる可能性がございます。
求人情報